『奴がなぜここに……』 監視モニターに映し出されたカリーパンマンの姿を見て、ジャムがつぶやいた。 それを見たサルモネラ菌マンは、怪訝な表情でジャムに尋ねる。 『…何をおっしゃっているのです? あれは…カレーパンマンではないのですか…??』 『姿形は似ていようとも、私にはわかる… 彼を生み出したのは、この両腕なのだからな…。』 ジャムは、不安げな表情でモニターを見つめていた。 いや、彼が見ていたのは、モニターに映るカリーパンマンの背負う、暗い過去だったのかもしれない。 ---------------- 『カ…カリーパンマン…!?』 『そう、俺はカリーパンマン。 かつてジャムの手によって作り出され、棄てられた、哀れなパンさ…。』 ピロリ菌マンが口を開く間もなく、カリーパンマンは続けた。 『失敗作としてこの世に生まれ堕ちた俺は、すぐに可燃ゴミとしてまとめられた… そして弟が…カレーパンマンが生まれたのさ。 ゴミ袋の中で俺は考えたんだ… 何のために生まれたのか… 何故俺は棄てられたのか… この世に生を受けた事が罪なら、俺は一体何にすがればいい? そして俺は、1つの答えを見出した…。』 ピロリ菌マンは息を呑んだ。 『それは即ち、善悪の定義…。 生まれたばかりの俺を廃棄したジャムを悪とし、自らを正義とする事で、俺はこの世に存在する意義を確立した。 そして、自らの正義を証明するためにも、俺は生き続ける事を誓ったんだ…。 残された僅かな力で、ゴミ袋という呪縛から自らを解き放ったのさ。』 ピロリ菌マンは驚きを隠せなかった。 『…並大抵のパンは、ゴミ袋に入れられた時点で生気を失うものだと聞いている。 カリーパンマン…失敗作とはいえ、侮れない力を持っているようだな…。』 カリーパンマンの目が、福神漬け色に輝く。 ピロリ菌マンにはわかった。 これは福神漬けではない… 復讐の色だ。 『さぁ剣を抜け、ピロリ菌マン!!』