明け方の薄暗い空を覆うは、おびただしい数のパン。


愛機・ミレニアムウイルス号のコックピットからその様子を見ていたバイキンマンは、敵軍の圧倒的な数に息をのんだ。


無数のバクテリオ・ビークルを引き連れ後方の空を飛ぶ優秀な部下達に呼びかける。


『コレラ菌マン、大腸菌マン!用意はいいな!?』


『はっ!!』




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『やっと来たようだな…。予定より随分と遅いじゃねぇか。』


先頭のカレーパンマンが呟いた。


『奇襲は成功のようですな。敵はまだ十分な準備が出来ていないようですぞ。』


かつて世界一の策士と謳われたビーフシチューパンマンが言うと、カレーパンマンは不敵な笑みを浮かべ、答えた。


『そのようだな…。

全軍、突撃ぃぃ!!!』




――凄まじいスピードで近付いていく両者。


そしてついに、激しい轟音と共に、二つの勢力は衝突した――




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『どうやら空も始まったようだな…。』


作戦司令室のモニターに映し出された空での戦いの様子を見て、ジャムが言った。


指揮は任されたものの、今はただ戦闘の様子を見ている事しか出来ない。



無力な自分に、腹が立った。


そんなジャムの姿を見て、バイキンマンが最も信頼する部下であるサルモネラ菌マンが口を開いた。


『ジャム殿。気を落とす事は有りません。あなたにはあなたの出来る事…いや、あなたにしか出来ない事が有るはずです。』



『私にしか出来ない事……』



ハッとある事を思い出したジャムは、急いで通信機を手に取った。


『今すぐ衛星に繋いでくれ!』




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地上では既に多くの死者が出ており、戦場は血とカレーの海と化していた。


陸上部隊の指揮官であるピロリ菌マンは、敵の圧倒的な戦力に絶望を感じるほかなかった。


航空部隊にも支援を要請したいところだが、墜落してくるバクテリオ・ビークルの数を考えれば、それが不可能である事は明らかだった。


しかし、敵の数も着実に減っている。


昼が近付くに連れ、インド人達の空腹感は次第に増し、カレーパンを食べる為に戦意は高揚し始めていた。


『これは勝てない戦ではない!!何としてでも昼飯時まで耐えろ!!

…お前達も早くカレーパンが食いたいだろう!?』


ピロリ菌マンの叫びに呼応して、インド人達は雄叫びをあげる。



もはや劣勢ではなかった。




そんな激しい戦乱の中、見覚えのある影が、ピロリ菌マンの視界に映った。


こんがりと焼けた茶色い肌、不気味なまでに裂けた口、異様なほど美味そうなカレーの匂い……


ピロリ菌マンは、航空部隊の全滅を覚悟した。


『カ、カレーパンマン……!!

貴様が何故ここに……!?』


動揺するピロリ菌マンを見て、彼はその裂けた口元に冷笑を浮かべた。





『カレーパンマン??


……違うな。




俺様はカリーパンマンだ!!』