あの演説から半日ほど経った今でも、二人の受けた衝撃が収まることはなかった。


しかし、二人を突き放すかのように、時計の針は淡々と進み続ける。


敵がいつ攻めてくるかわからない状況の中、迷っている暇などないのだ。


バイキンマンにはそれがわかっていた。


『なぁ、ジャム。奴らはもう、この山の麓まで来ているかもしれないんだぜ?

あんたも早く、心を決めた方がいいんじゃないか?』


深刻な面持ちで、麓の街並みを見下ろしていたジャムは、飲みかけのワインを一気に飲み干し、短く、しかしはっきりと答えた。


『…戦おう。』





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街の外れに佇む、灰色の建造物。


主を失ったその工場は、かつて子供たちに夢を与えていた姿は想像も出来ない程に、変わり果ててしまっていた。


自らを生み出した母なるオーブンを見つめながら、男は呟いた。


『本当にこれで良かったのだろうか…。』


誰に話し掛けるでもなく、彼は続ける。


『私はジャムを恨んでいる訳ではないのに…。』


『何をおっしゃってるんですか、あなた。』


妻のメロンパンナだった。


『あなたはこの革命の指導者なのよ。こんなところで弱気になっていてどうするの。』


『しかし…多くの犠牲者が出ることは私の本意ではない。人間にだって家族はあるだろうに…。』


メロンパンナは夫の躊躇いを許さなかった。


『何千、何万というパン達が、決意を固めているのよ。あなたが迷っていてどうするの!!』


その言葉は、アンパンマンの決意を一層強め、奮い立たせたのであった。




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それぞれの正義の為、戦うことを決意した両者。





互いにもう、迷いはなかった。